Painless delivery無痛分娩
無痛分娩をご検討中の方へ -当院の考え方と基本情報-
無痛分娩をするのは正しいのかという世論は、時代によって変遷してきました。過去においては批判される対象だったこともあります。世論は判断の基準にはなりません。無痛分娩の理念はそれぞれの施設が持っています。「無痛分娩教室」では、当院の理念を長時間にわたりお話しています。しかし施設のポリシーもまた、患者さんの無痛分娩の選択の基準にはなりません。
誤解を恐れずにいえば、無痛分娩はただの「商品」です。だから、私たちに許されるのは、より良い商品にするために努力を重ねることだけです。商品の購入動機は正しさや理念ではなく、「それが欲しいから」です。そして商品購入は、必要な商品情報を知った上での意思決定であるべきです。販売する側には「ジャパネットたかた」のようにできるだけわかりやすく、自社商品の情報提供をする義務があると考えます。
- 料金
- 100,000円
(何らかの理由で帝王切開になってしまった場合は無料です。)
- 方針
- 陣痛が発来してから開始するオンデマンド方式です。日時を問わず必ず対応いたします。硬膜外麻酔による「無痛」を目標にしています。
- 開始時期
- 「痛い」、「辛い」と感じた時点を開始のタイミングにしています(子宮口の開大を待ちません)。陣痛で入院された場合、できるだけ速やかに開始します。
- 帝王切開率
- 無痛分娩を開始しながら帝王切開になってしまう確率は約1%です(全国的には3.5~12%位です)。
- 吸引分娩率
- 無痛分娩を開始しながら吸引分娩になってしまう確率は約1%です(全国的には20~40%位です)。
- 満足度
- 無痛分娩終了後の鎮痛効果についてのアンケートで、「満足」または「ほぼ満足」とお答えになられた方の割合は約98%です(全国的には80~90%強です)。
- 安全性
- 重篤な無痛分娩事故の発生は現在までありません。合併症である硬膜穿刺後頭痛の発生率は0.1~0.2%位です(全国的には0.4~0.8%位です)
- 実績
- 現在まで27年間、8,947例の無痛分娩実績があります(1999年〜2025年末時点)。
- 体制
- 麻酔科標榜医が2名在籍しており、産科・婦人科・麻酔科を標榜し、安全管理を徹底しています。
無痛分娩事故と情報公開
2017年無痛分娩に関連した医療事故の報道が相次ぎ、無痛分娩の安全性に関し公的機関やいくつかの学会で調査がなされ、厚生労働省は各医療施設に、無痛分娩に関する情報公開を提言しました。それらの分析によると「無痛分娩事故」とは、「麻酔の事故」(=麻酔薬を誤った場所に注入してしまったなど)と、「分娩の事故」(=吸引分娩のため産道に裂傷が入ったなど)に分けられます。麻酔事故は盲腸の手術でも発生しますし、分娩事故は無痛分娩でなくても発生します。無痛分娩事故という特殊なものはありません。麻酔と分娩、その2つの事故の予防や合併症の早期発見と適切な対応が求められています。
- 無痛分娩事故
- 麻酔事故
- 分娩事故
当院で行っている無痛分娩
硬膜外麻酔を用いた無痛分娩には、あらかじめ日程を決めて硬膜外麻酔下に陣痛促進剤を投与する方法(計画無痛分娩)と、自然陣痛が来てから硬膜外麻酔を開始する方法(自然無痛分娩:オンデマンド)があります。当院は一貫して、通年24時間対応で自然陣痛が来てから硬膜外麻酔を開始する方針としており、無痛にするために計画分娩を行ったことはありません。陣痛誘発は、自然陣痛に比べると陣痛促進剤の使用などのリスクが加算されると考えているためです。陣痛誘発は医学的理由(前期破水や羊水過少など)のみで行っています。
- 無痛分娩
- 自然無痛分娩(オンデマンド)自然分娩時に硬膜外麻酔をかける
- 計画無痛分娩陣痛を誘発して硬膜外麻酔をかける
無痛分娩の担当医師
当院では4名の医師が、硬膜外麻酔に直接携わっており、いつでも必ず対応します。
また、昼の外来診療が行われている時間帯では、分娩担当医は別にしており、原則的に外来診療をしながら無痛分娩を担当することはありません。
〈常勤医師〉
- 井槌 邦雄
- 日本産科婦人科学会専門医 母体保護法指定医 J-MELS・NCPR・BLS・日本産科婦人科学会 日本産科麻酔学会
- 池田 真一
- 日本産科婦人科学会専門医 母体保護法指定医 J-MELS・NCPR・BLS・麻酔科標榜医 日本産科婦人科学会 日本産科麻酔学会
- 小濱 大嗣
- 日本産科婦人科学会専門医 日本産科婦人科学会指導医 母体保護法指定医 J-MELS・NCPR・BLS・日本産科婦人科学会 日本周産期新生児学会 日本産科麻酔学会
- 井槌 大介
- 日本産科婦人科学会専門医・周産期専門医 J-CIMELS・NCPR・麻酔科標榜医 日本産科婦人科学会 日本周産期新生児学会 日本産科麻酔学会
無痛分娩のご予約
当院で無痛分娩をご希望される場合は、まず「無痛分娩教室のDVD」をご視聴していただき、その後に同意書のご提出で予約が完了となります。妊婦健診時に担当した医師へご提出ください。
- 「無痛分娩教室のDVD」の視聴
- 同意書の提出
- 無痛分娩のご予約完了
無痛分娩の診療実績
当院では27年前(1999年)より硬膜外麻酔による無痛分娩を行っており、積算すると2025年末までに8,947人、近年では当院で分娩される約60%の方が硬膜外麻酔下に出産されています。2025年末まで過去27年間の無痛分娩の分娩数です。
当院の無痛分娩数の推移
- (年)
- (人)
- 2025年
- 635人
- 2024年
- 629人
- 2023年
- 595人
- 2022年
- 517人
- 2021年
- 436人
- 2020年
- 422人
- 2019年
- 401人
- 2018年
- 349人
- 2017年
- 385人
- 2016年
- 345人
- 2015年
- 345人
- 2014年
- 329人
- 2013年
- 334人
- 2012年
- 342人
- 2011年
- 290人
- 2010年
- 291人
- 2009年
- 314人
- 2008年
- 314人
- 2007年
- 292人
- 2006年
- 262人
- 2005年
- 252人
- 2004年
- 243人
- 2003年
- 183人
- 2002年
- 134人
- 2001年
- 124人
- 2000年
- 120人
- 1999年
- 64人
無痛分娩の成績
公表されている大学病院や周産期センターの無痛分娩の成績では、30~50%の方が途中から帝王切開または器械分娩(=吸引器や鉗子といった器械を使って牽引する分娩)になっています。これは米国の成績とほとんど一緒です。このことはアメリカでは一般に知られていますが、わが国では無痛分娩する方のほとんどが、これほどの高い数字になるとは知らないのが現状です。この「不都合な真実」が日本で無痛分娩が拡がらない隠れた大きな理由です(無痛分娩に否定的な医療関係者は、産婦の苦痛に理解がないのではなく、この事実を知っているからです)。
ところが日本の産科には「できるだけ帝王切開や器械分娩をしない」という、世界的にはすでに絶滅した伝統が残っていたため、主として開業医たち(日本で初めて硬膜外麻酔下の無痛分娩を行った田中康弘先生など)が長年かけて「日本の無痛分娩」を作ってきました。
当院で統計を取り始めた2012年から2025年までのこの14年間で、6,064人の方が硬膜外麻酔を用いた無痛分娩をされました。このうち無痛分娩の途中で何らかの理由で帝王切開になった方が36人(0.59%)、また、吸引分娩となった方が68名(1.12%)です。これは上記の数字より10分の1以下の低い確率になります。
しかし、当院では過去14年間、無痛ではない方の吸引分娩率は0.5%を上回る年はありません。無痛分娩の吸引分娩率の1.12%はそれと比べるとまだ改善の余地があり、さらに減少させるよう研鑽を重ねております。なお、2025年の無痛分娩での吸引分娩率は635人中5人(0.79%)でした。当院の2025年の全分娩数は954件、うち帝王切開は78件、帝王切開率は8.2%です(わが国の全ての産科病医院の平均は21.6%です)。
この78件のうち50件が骨盤位や前回帝王切開などのあらかじめ予定して行った帝王切開で、胎盤早期剥離などの緊急帝王切開は28例(2.9%)です。この緊急の中には、経腟分娩と帝王切開両方のリスクやメリットの説明を聞かれた上で、帝王切開を選択された方を含みます。
| 年 | 無痛分娩(人) | 無痛分娩からの 帝王切開(人) | 無痛分娩からの 吸引分娩(人) |
|---|---|---|---|
| 2025年 | 635 | 2 | 5 |
| 2024年 | 629 | 1 | 1 |
| 2023年 | 595 | 2 | 5 |
| 2022年 | 517 | 3 | 2 |
| 2021年 | 436 | 5 | 3 |
| 2020年 | 422 | 5 | 6 |
| 2019年 | 401 | 2 | 6 |
| 2018年 | 349 | 2 | 3 |
| 2017年 | 385 | 2 | 4 |
| 2016年 | 345 | 1 | 6 |
| 2015年 | 345 | 1 | 4 |
| 2014年 | 329 | 3 | 10 |
| 2013年 | 334 | 4 | 6 |
| 2012年 | 342 | 3 | 7 |
| 合計 | 6,064 | 36 | 68 |
| 0.59% | 1.12% | ||
無痛分娩を予定していた方が麻酔開始前に帝王切開となった場合(高血圧・胎児機能不全など)は、「無痛分娩からの帝王切開」には含みません。
無痛分娩の有効率
突破痛(ブレイクスルーペイン)といわれる骨盤内の辛い痛みが終盤になって出現することがあり、無痛分娩と謳っているのに、とても辛かったというご感想をいただくことが何回かありました。これらのお声を受けて、2026年5月より薬剤・手順・マニュアルなど対応策を工夫するとともに、6月より分娩後に無痛の効果を「満足」、「ほぼ満足」、「やや不満」、「不満」の4段階に分けてアンケートを取り、「満足」、「ほぼ満足」の割合を有効率として、今後毎年集計して発表することといたしました。なお、現在2026年8月末までのアンケート結果では、有効率は98%です。
*2026年末までのアンケート集計結果は、4段階それぞれ集計して%で表示したものを2027年1月に公表予定です。
無痛分娩の合併症
「無痛分娩事故」として報道されたものの多くは、「くも膜下注入(全脊椎麻酔)」と呼ばれる合併症です。硬膜外麻酔の大きな合併症はこの「くも膜下注入」と「血管内注入」です。これらの予防のために、硬膜外麻酔に用いる器材の工夫や、チェックの手順の遵守の徹底、スタッフのシミュレーショントレーニングを行っています。
今までのところ、これらの合併症は1例も起きていません。ただし、「硬膜穿刺後頭痛」といわれる合併症は、今までに10人ほど(0.1~0.2%)発生しており、平均よりは低く抑えているのですが、完全に防ぐには至っておりません。この頭痛は約1週間で全員が軽快されています。また、皮膚のかゆみ、吐き気、発熱など(無痛分娩でなくても発生することあり)が起こることもあり、いずれも薬剤で対応しております。
なお、出産後の下肢や殿部のしびれは、分娩時の神経圧迫で起き、無痛分娩によって増加する事はありません。
無痛分娩の費用
無痛分娩には健康保険が適用されません。このため自費で無痛分娩手技料100,000円をいただいています。ただし、入院後すぐに硬膜外麻酔を開始したが十分に効果がでる前に分娩に至ったなどの場合、料金はいただいておりません。
高次施設へのご紹介
当院は一次医療施設であり、妊娠経過中に問題が発生し、高度な医療や内科などの協力体制が必要になった場合は、高次医療施設にご紹介することがあります。出産まで関わらせていただきたいと願ってはいるのですが、母子の安全を最優先にしなければならないと判断し、やむを得ぬ選択を取らせていただくことがあります。このとき、紹介先医療機関での無痛分娩のシステムが当院と異なっていたり、無痛分娩をすることができなかったりすることがありますが、優先順位としてまず母児の安全であり、それが確保された上での無痛分娩であると考えます。
できるだけ硬膜外麻酔を行っている施設をご紹介したり、無痛のご希望であることも情報提供いたしますが、実際は紹介先の高次施設でご相談いただくことになります。
誠に申し訳ございませんがどうぞご容赦ください。